2008年02月16日

歌は終った。しかしメロディはまだ鳴り響いている 

「歌は終った。しかしメロディはまだ鳴り響いている」
(村上春樹)

狭い道端に乗り捨てられた自動車を見た。タイヤはなく、窓ガラスは割られ、エンジンは抜き取られていた。破れて雨水を吸い込んだ座席だけが、誰を乗せるべくもなく待っていた。いつかは平和な時代に笑顔を乗せていたのかもしれないが今はもう動かない。
でも、朽ち果てた鉄屑の片隅にほんのりとした思い出がまだ座っている。どんな思い出かはわからない、ただ人の生きた“痕跡”がほんのりと座っている。

風に音があるならそれは音楽になり、色があるならそれは絵画になる。
意味があるなら言葉になり、時間はそれを思い出にする。

人それぞれに感じ方も表現方法も違う、なのに共感する人と出会うのは「個性」というものがそこに響いているからだと思う。
自分を表現する「個性」は、誰とも違う“不完全さ”を持、弱点となりやすい。
でも言い換えればその人だけが持っているものであるし、人を注目させる魅力でもある。
不器用で不細工なものであったとしても、それを響かさなければ何も伝わらない。
完全であることが無条件にすばらしいことじゃない、不完全さが誰かの心の中でいつまでも鳴り響いていることだってあるのです。

本当に訴えたいこと、本当に伝えたい事は、きれいな言葉に直して言うことができない。どちらかというと悲痛な叫びやうめきであり、祈りであり、しぼり出されるような“振動”…それが生きるということ。だから、不幸なこととはそこに自分を表現することができないことなのだと思う。

自分を響かせること…その音はかき消されてしまったとしても、必ず誰かのもとに届いていく。
人は肉体が死んでも思い出が死ぬまで生き続けます。形として消え、音として消え、時間は何もなく過ぎて行く。でもそこには子供の描いた絵のように、絵というよりは思い切り自分の心をぶつけたような“痕跡”には、良い悪いを超えた生命が鳴り響いている。

そんな風に僕達は生きているから、形も色も匂いもない無味乾燥だと世界に感じていながら、そこに何らかの“痕跡”のようなものを残すことが生きがいになっているのかもしれませんね。



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