2008年10月02日

“みんな”と生きているから“有り難い”

「もったいない」と並んで「いただきます!」という言葉は日本独特の文化だ。
西洋は神に感謝し、日本は自分と共に生きる“みんな”に感謝する。不特定な存在に「ありがとう!」と感謝して食事をいただくことは外国の人達にとっては奇妙に映るらしい。

習慣になっているので普段は考えないけれども、僕達はいったい誰から「いただいて」いるのだろう? 料理を作ってくれた人から?買ってきた人から?運んできた人から?素材そのものから?それを生み出した自然から?社会に貢献している自分から?…。

人は当然のことながら“みんな”という集合体の中で生きています。
狩をする人、漁をする人、畑を耕す人、物を作る人、それを運ぶ人・・・“みんな”がそれぞれに能力を分担し補うことで“村”を作り、各村ごとの交流によってさらに補い合い、町になり、それを大きくまとめたものが“国”となります。だから個人の努力も当然“みんな”に還元され均等に分配されるもので、もし自分の努力の成果がそのまま自分の報酬として100%跳ね返ってくることになれば誰も“みんな”のことを考えなくなるでしょう。

実際には“みんな”がいなくなれば、個人の報酬もなくなるので、一人勝ちで誰にも還元しない存在は必ず消される運命を背負うことになります。グローバリズムという“自由”の弱肉強食の世界はそんな危険性を孕んでいます。誰かの成功が自分に還元されなければ、誰も他人に感謝しない。個人と“みんな”が互いにうまくいったことを自分のことのように喜べるからこそ社会の中で生きていくことができるという暗黙のルールがあるのです。

特に日本は島国でフロンティアの文化はないから、その枠内でいかに共存していくかが大切で、諸外国に侵略して成功したことは歴史的にない。だから日本企業は“現地化”する努力をしているように思える。
株や為替で一人勝ちが許されるのは、搾取されても“みんな”がまだ生きていける分がある場合のみだ。“みんな”が死ねば“グローバル”も消える。
自分のことだけを考えればいいという発想は、誰からも制限や干渉を受けない自己責任の“やりがい”という自由を手に入れると同時に、“みんな”との関係性を失い“やりがい”もまた失うという矛盾を持つことになります。

つまりは“やりがい”とは自分ではなく“みんな”に向かって持たなければ消えてしまうものだと思うのです。だから日本の“競争社会”とは「どれだけ自分が社会に貢献できるのか?」という問いであって、「どれだけ自分が事業で成功し金持ちになれるのか?」というアメリカン・ドリーム的なことじゃない。農耕民族に狩猟民族の発想を盛り込もうとしても根本的に合わないと思う。“エコ”や“ロハス”などはその悲鳴のように響いてくるのです。

狩猟的競争社会ではどうしても勝ち負けの格差が広がり一部の金持ちとそうでない大多数の層が出来上がる。そこに平等・平和なんて理想を持ってくるから、一方では他人を蹴落とせと言いながらもう一方ではみんな仲良くと矛盾に満ちた状態になる。持てる方が持たざる方に分配するならいいけれど、そんなことになったら誰もが分配されることだけを望んで努力しなくなるでしょう。

そんなときに必要なこと、“有難い(ありがたい)”。有ることが難い(むずかしい)こと、稀に起こる出来事。僕たちは当然の如く生きて当然の権利を享受して自由であることが当たり前であるように思っている。でも、それは“みんな”が作ってくれる自由であり、本人が思い込んだ“不自由”なのです。

今僕達が“当たり前”と想っていることが極端な話、明日違っていることなんてザラにあります。この瞬間・瞬間に起こる出来事が“有り難い”ことであり、幸せな・不幸な自分がこのままずーっと続いていくことは“有り得ない”。
だから、自分の力を信じて一人で生きていくことは聞こえは格好良くてもそれも“有り得ない”ことなのです。人は一人では生きていくことができない、でも“みんな”となら生きていくことができる。だから今の自分に縛られずに未来の“みんな”に自分の生き方をリンクさせる想像力が必要だと考えます。
努力する人もいればしない人もいる、でも何人かに一人でもみんなのために生きようと考えているからこそ、世の中でなんとか生きていける。
だから、有名になったり金持ちになったりする人は、そうでない人を救済する義務はないけれど、“みんな”の生贄になるくらいの覚悟を持っていると思う。だって僕達にとって“英雄”になる人は“みんなのために生きている人”になるはずなのですから…。
明日の自分は今日の自分とは違うし、未来の自分はもっと違う。今の自分に固執せず、“みんな”と生きるのならば、“有り難い”ことが無限にあると思いませんか?

参:オールフォアワン、ワンフォアオール
二伸:僕の時代のヒーローは「スクール・ウォーズ」の中にいるかもしれない。





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