心に効く言葉

芸術はきれいであってはならない、うまくあってはならない、
心地良くあってはならない。　しかし、美しくなければならない。

（BY岡本太郎「今日の芸術」）

自分らしくある必要はない。　
むしろ“人間らしく”生きる道を考えてほしい。
人生は積み重ねで自分に忠実であることが美徳と言う人もいるが、“本当の自分”とは逆に財産も知識も積み減らすことだと思う。

自分に忠実だなんて自信を持って言っている人ほど、自分を大切にし過ぎて社会や世間体を考え身動きがとれず自分を破ろうとしない。　
本当に生きたいと求めているならば、社会とも世間体とも、そして自分自身とも戦わなければならない。盲目的な“忠実”なんて言葉は型にはまった狭い世界のことで、自分の奴隷になっているに過ぎない。

社会では否定されるだろう。だが、甘えることなく、最大の敵である“自分”を叩き潰し自己の新生を求めることが、奴隷生活から抜け出し“ほんとうの生き方”をすることだと思う。

だから、“もっと自分らしく”とか“自分探しの旅”なんて言葉はおかしい。　
どのような無残な形でも“自分”はいつもそこにあるからだ。　
“癒し”とか流行っているようだが、癒された後はどうするんだ？

そんなみじめな自分を認めたくないから外に“自分らしさ”を求め空虚になってしまう。
もしくは、つまらない固定概念に捉われ「自分はこういう人間」と決めつけ安全な道を行く。
みっともなくても覚悟を決めて自分と闘い壊すため、自分ととことん付き合っていく。

自分をダメな奴と思うなら、それを直すことなんかしない。それが大事。
どういう風にダメなのか、そのダメぶりのどこが自分の譲れない正体なのか突詰めてみる。　辛いがそれが一番面白い。

自分はこんなものだと甘えるか逃げるか、結果が思うようにいかなかったって自分は筋を貫いたんだと思うかが、“美しく”生きる境界だ。

チルチルとミチルは幸せの青い鳥を探して旅をしました。　
でも、その青い鳥は最初から家の中にいたのです。

「こんなの自分じゃない」「他に幸せはあるはずだ」と外的要因のせいにし、自分の問題から逃げている私がいます。
充実した生き方をしたいと思っても何かをするのが面倒で「忙しい・忙しい！」とわざと忙しい振りをする、もしくは「暇だ、暇だ！」と誰かが何か面白いことをしてくれるのを待っている…それらは同じことのように思えます。

“それ”は既に目の前にあるのです。
でも、自分に目を向けないと見つけることができません。　

みじめな自分を見たくない…だから余計に悩む。「自分らしくって何ですか？」と…。

“芸術”を“人生”と置き換えてもう一度この言葉を読んでみて下さい。
“きれい”とは、相対的で条件的なものですが、“美しさ”とは絶対的で無条件なものです。

きれいなものに出逢うと私達は安心して喜びを感じます。
しかし、時代が変わるとその“価値”も変わってしまうものなのです。
それは“型”という基準が存在していて、流行であるとか、多数派意見であるとか、そんなもので変わってしまうものです。

しかし、私達が“美しい”と思うものに出逢ったとき、強く心の奥底にどしっとした衝撃が走ります。体裁や楽しさという条件は全く無視して、ひたすら生命が高揚するものなので、場合によっては一見殆ど醜くいやらしい、無意味で恐ろしいものであったりします。

それでも釘付けになってしまう…「なんだこれは！？」と言いながらまじまじと見てしまう。
いつ、どこで、どのように出会おうとも、同じように「なんだこれは！？」という心の揺さぶりをひきおこさせないと、“美しい”とは言えないのです。

“上手に生きる”ことが無難な人生だとするならば、“美しく生きる”ことはその対極にあり、危険で困難な人生であるということです。
本当に生きようと思うと、人生はまことに苦悩に満ちています。
矛盾に体当たりして、瞬間瞬間に傷付き、総身に血を噴出しながら、雄々しく生きる…その姿は直視にたえません。

“生きがい”を持つということは、“死”が現前するということです。
惰性的に生きれば心地良く、死の危機感は遠ざかります。しかし空しくなります。
死を前提にした生であるからこそ、人は精一杯の“美しさ”を表現できるのではないでしょうか？

全身全霊が宇宙に向かって無条件にパーっと開くこと…「芸術（人生）は爆発だ！」


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