心に効く言葉

自分に自信を失くしてしまうとき、それは身体と頭脳、そして心のリズムが崩れてしまっているときだという。カラスが自分に向かって鳴き、黒猫が行く道を横切り、くつ紐が切れ、雨までが降り出してくると、人の心は簡単にバランスを崩してしまう。
心のバランスが崩れると、頭脳は悪い想像をはじめる。悪い想像は身体能力を著しく低下させ、その結果やることなすこと全てが不満に満ちたものになっていく。

逆に、人が自信を付けるとき、それは身体と頭脳と心のリズムが統一された時なんだろう。心がウキウキしていると、頭は良い想像をし、良い想像は身体能力を向上させる。
その状態がいいのはわかっている。でも、その状態にどうしたらなれるのかがわからなかったりする。身体能力は運動によって鍛えることができるし、頭脳は勉強によって鍛えられる。でも心だけはどう鍛えればいいかわからない。人それぞれに“心のスイッチ”のような、カチンと何かを切り替えるような装置があって、万人に適応できるというようなものはないからだ。

”心のスイッチ”。それは、逆境に陥ったときに出てくる火事場のクソ力のような装置の場合もあるし、「海のバカヤロー！」などと声を出し切ったときの開放感や泣きたいだけ泣いたり、笑いたいだけ笑ったり、鏡に向かって言い聞かせたり、瞑想や呼吸法、もしくは自傷行為などもある。一時的に心を誤魔化すだけかもしれないし、とても自分にとって効果的なスイッチもある。どの方法が一番良いかなんてその人によって違うけれど、ただ、共通する心の良い状態というのはあります。

それは「素直」という状態。素直とは、言い換えると“余分なことを考えていない”ことであり、それは何かに集中していることです。
バカがつくほど愚直にそれだけをやり続ける心の状態になったとき、人は余計なことを考える必要もなくなり、頭も身体もそのために必要な想像や行動だけをしようとする。その結果、「気持ちいい！」と理由なく言葉が溢れてくる。
素直な心とは人の話を鵜呑みにしてマインドコントロールされてしまうようなものではなくて、自分にとって良い想像や行動を促すための、言葉通り素朴で真直ぐな気持ちなんだと思う。

悪い予感や雑念に頭がいっぱいになってしまうときに大切なこととは、今目の前にあることだけを楽しくさせようとする心構えみたいなものなんだと思う。それは、頭の中に何かを入れていくものじゃなくて、一度空っぽにして何か良いものが入ってくるような感覚だったりする。何でもポジティブに考えるなんて実際には無理なんだと思う。嫌いなピーマンを食べなきゃいけないとき、無理に好きになるなんて出来ない様に。

でも、心配は心配しか想像させないし、心配で物事が良くなることなんてないと気付いたのならば、もう一層上の視点で「何故自分は心配してしまっているのか？」を追求するために素直になってみるのもまた面白いかもしれない。
最終的に楽しいことにだけ素直になれる状態になれば、心技体のように統一されるようになるだろうし、自分のリズムが整ったときにこそ自分の自信として“答え”のようなものが実感できるのだと思う。単純に人は楽しいことにしか動くことが出来ないのですから…。

参：　“答え”は思い出される